僕の舌動かすのは何や?
かつて東井義雄氏がNHKテレビ「こころの時代」で5歳の保育園児のつぶやきとして紹介された言葉が
よく思い起こされる。
「僕の舌動け」というたときは もう動いたあとや
僕より先に 僕の舌動かすのは何や?
5歳のお子が、自分が生きている存在のはたらきを感覚しているのである。お念仏のご縁の中で育てられたのか、自分の思い以前に自分を動かしている”不思議“に問いを立てる、柔らかで新鮮な生命感覚に驚かされる。
こんな小さな子が、いや小さい子だからこそ、素直に身体で”不思議“を感じ取るのか。
親鸞様は、阿弥陀仏は「自然(じねん)のはたらきを私たちに知らせるご方便」とおっしゃって、「自然(じねん)というは、もとよりしからしむるということばなり」と。私の外に見る自然現象でなく、私を生かしめている生命根源のおはたらきと。
人間はその命を私有化し自我が芽生えると、元のいのちを忘れて、もっぱら自我が描く夢の実現に生きる。でも身体は決して忘れない。
「私より先に心臓を動かしているのは何や」
「私をかく在らしめているのは何や」
この身に自然力(じねんりき)はいつも問いかけている。
(即応寺前住職・藤井善隆)