大阪市阿倍野区即応寺(住職の誓い)


宗祖親鸞聖人750回御遠忌法要『表白』より

『表白(ひょうびゃく)』…住職が念仏者との誓いをたてる事

▼「表白」の様子はこちらを御覧下さい。

2022年5月15日、本日ここに阿弥陀如来と十方諸仏の御照覧の下、御法中、並びに、即応寺御門徒衆皆様の御参集を賜わり、「宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要」を勤修させていただくことであります。ここに有縁の同朋、合い寄り集い、恭しく尊前に香華を備え、一同に御仏の御名を称えつつ、この法座を荘厳いたします。

 

思うに、当即応寺は、寛永元年、大阪市は中央区・難波別院内に真宗大谷派長順坊として発足して以来、約三百年間、南御堂を護るお寺として存立して参りました。やがて一九二六年に始められた御堂筋拡張工事によって、御堂内に在所をおく寺院は移転を余儀なくされ、昭和六年十二月に現在地である阿倍野区へと移転し、戦争の大火によって焼失するも、平成元年の本堂庫裡の再建をもちまして今日に至るものであります。

 

この間、四百年にわたり、当即応寺が相続されて参りましたのも、ひとえに歴代住職をはじめ御門徒衆皆様の断ゆまなき仏法弘通のご尽力の賜物にほかならず、ただただ御先達の護持崇敬の真心に深く謝するばかりです。

 

今、世界を取り巻く状況は大きな困難の中にあり、二〇一九年以来、瞬く間に拡がった新型コロナウイルスの世界的蔓延によって、いまだに世界中の人々が甚大かつ深刻な苦しみを受け続けています。加えて、昨今のロシア連邦によるウクライナへの非人道的な暴力による戦争は憂慮に絶えず、連日、罪のない多くの人々の命が奪われてゆく報道を目にするたびに、同じ人間として、心が引き裂かれる思いです。

 

 

みんな同じ世界の中で一緒に生きて在るのに、どうして人間はその事実に頭を下げることができないのか。

「人間の戦争のもとは、人間の方にある」

 

私達人間はいつも、頭だけで喧嘩します。思い通りにならないことがあるとすぐに腹を立て、相手ばかり責めて生きています。この世は「娑婆」ですから、この「娑婆」という世界には“人間の思い”しかありません。それはコロナやロシアの問題だけにとどまらず、残念ながらこの世の中は、お金や、地位や名誉といった関心ばかりで、私たちはそうした日常の関心の中で日々自分の思いを通そうと色々な所でぶつかり合っているのです。

 

人間の生活は、親子でも夫婦でも、職場でも、ご近所付き合いであっても、お互いに主導権を取り合って、結局最後には、どちらかが天下を取るという話にしかならない。そうやって、この世の中は人間の自己関心によって塗りつぶされています。

宗祖親鸞聖人の教えの素晴らしい所は、そうした娑婆の中にあって、人間の苦しみの元は、そうしたいつも自分を立てようとする私の根性と、ナンデモカンデモ自分の思い通りにしたいという根性、そこに地獄を作る元があるのだと、きちんと見抜いてゆかれたところにあります。自我を立てて真理に背いて生きる人間のあり方のところに戦争や紛争、あらゆる問題を引き起こす元があるのだと、宗祖親鸞聖人は本願の教えからよく聞き取り、深く教えのもとに頭を下げてゆかれたのでした。

 

私も、御門徒衆皆様も、お互いに「必ずお釈迦様の教えに出遇わなければならない者」として生まれてきた身であります。日頃のちっぽけな自己関心の世界を突破して、自分の好き嫌いを超えたもっと大きな世界(無量寿)に目を覚ましてゆくことの大切さを、今、この宗祖親鸞聖人の750回目のご法事を契機に明らかにしてゆかねばなりません。

 

今こそ、ちまたで囁かれ続ける「生き残れるか仏教」という言葉に応えるべく、このような時代社会の中だからこそ、

 

「苦しみや悲しみの中で、寄る所のなく不安な日々を過ごしておられる方々に、真宗のお寺はどう応えてゆくのか?」

「この苦悩の世を超えて、自分自身として生きていくには何が必要か?」

 

宗祖親鸞聖人が明らかにして下さいました本願念仏の教えを導きとして、人として生まれてきたことの深い感動を明らかにすべき「念仏生活」の大事を強く思うものであります。

 

 これからは先人より大切に手渡されて参りました南無阿弥陀仏の教えの法灯を絶やさぬよう、より一層の聞法精進に邁進し、御門徒衆皆様と共に「御同朋 御同行」の一人として歩んでゆく所存です。

 

そして、かのマハトマ・ガンディーが言われた「もしも世界に本当の平和を教えるなら、子どもから始めなければならない」との言葉を胸に刻み、お寺で子供たちに手を合わせることの大切さを伝えてゆく努力をして参ります。未来の子どもたちに“生まれた意義”と“生きる感動”を伝えてゆけるよう、どんな人の中にも、深くてかけがえのない、すべての人が無限の輝きをもった人生であることを、子供たちに届く言葉で繰り返し伝えてゆく努力をいたします

 

御内陣にて阿弥陀如来の願いを説明している所
御内陣にて阿弥陀如来の願いを説明している所

これより先、未来永劫にわたって、南無阿弥陀仏のいのちの教えが、後の世の人々にまで光となり輝き続けてゆくよう、真宗伝導の仏事に一意専心し、即応寺が人生の生まれた意義と生きる喜びを確かめ合う聞法の道場として在り続けられるよう、これからも即応寺御門徒衆皆様と力を合わせて精進してゆくことを、重ねて此処に、阿弥陀仏・十方三世の諸仏に誓うものであります。

     

令和四年五月十五日

        

獅子吼山即応寺第十七世住職 釈真隆

敬って申す